第8章 食戟のソーマ―――四宮小次郎
『はぁ……緊張したぁ~。あんなに人がいるところで壇上に上がったのなんて卒業して初めてです』
「緊張しすぎよ。もっと肩の力を抜きなさい」
『……はい』
冬美先輩に言われて深呼吸する
そして、私は自分の審査の場所に向かった
生徒が全員集まったところで私はもう一度深呼吸をして口を開いた
『それでは始めたいと思います。
私は第88期卒業生の松長です。四宮先輩の店の副料理長ですが、審査は厳しくいくので、よろしくお願いしますね?』
「厳しくって………あの神の舌に次ぐ舌を持ってるって噂なのにか!?」
「それに四宮シェフの店の副料理長……!?」
「だけど、十傑に入れなかったんだろ?」
そんな声が聞こえるが、私はそれに答えず話を続ける
『私の課題はこの3つのフランス料理のルセットのどれか一つを選んで作ってもらいます。
制限時間は2時間です。
それでは、調理を始めてください!』
パンっと手を叩くと生徒達が動き出す
それを見ながら私は紅茶を啜った
「あ!おい!それは俺が取ろうとしてた……!」
「うるせー!早いモン勝ちだ!」
ほとんどの生徒が一つのルセットを作ろうとする
それは私が用意したものの中で一番簡単
ということはそれの逆もあるというわけで、一番難しいものは私が考案した、現在SINO’Sでも人気の料理
それを少しアレンジしたものだ
だが、一番簡単なルセットと難しいルセットは材料が全く違う
それに、簡単なものの材料は数を少なくした
慌てふためく生徒達を見て私は口を開いた
『あ、そうそう。ペアを組んでも構いません。二人で一皿と判断します』
そう言うと生徒の何人かの顔が明るくなる
『ただし………審査はさらに厳しくするし、やり直しは出来ませんけどね』
そう言った瞬間、生徒達の顔は地獄にでも落とされたようになった
たけど、その中でも3人
平然とした顔つきで最も難しいルセットを選び、調理に入っていくものがいた