第8章 食戟のソーマ―――四宮小次郎
『…………はあ、緊張してきた……』
生徒たちが集まっている広間の裏で卒業生は待機していた
ザワザワとしているがそれに負けないくらい、私の心臓も煩い
「緊張しすぎだ」
「大丈夫ですよ!みずきちゃん!」
ヒナコ先輩が私の手を握ってくれる
『は、はいっ』
シャペル先生が生徒達に話をした後、私達卒業生が呼ばれる
堂島先輩に着いていくと、生徒達から歓声が上がった
ここにいるのは私以外店を持っている元十傑の人達ばかり
私、場違いな気が…………
そう思っていると、小次郎さんが呟いた
「シャキッとしろ。オレの店の副料理長なんだ。
それとも、オレの店じゃたりねェか?」
『いえ、私には勿体ないくらい、素晴らしいお店です。
……ありがとうございます』
私は少し下を向いていた顔を上げる
すると、小次郎さんが口を開いた
「ンー………前から9列目……眉の所に傷がある少年」
赤い髪をした男の子が自分を指差し不思議そうにする
「あ、悪い悪い。その隣だ。
そうオマエ、退学。帰っていいぜ」
「!!?」
生徒達は何が起こったのかとざわつく
「整髪料に柑橘系の匂いが混じってる。こいつは料理の香りを霞ませるんだな。
お洒落は必要だ。作る人間がダサいと料理に色気がなくなるからな。
でも次からは無香料のヘア・リキッドを選ぶといい」
「ま………待ってください!何……退学!?
たったこれだけの事で―――」
「たったこれだけの事で客を失うこともある。テメェ俺の店を潰す気か?」
キッと睨み付けると生徒は怯んだ
「お疲れ学生さん!」
『少し言い方がキツいんじゃないですか?』
「ああいう奴は料理も大したことねぇよ。今落ちるか後で落ちるか、結果は同じだ」
ふんっとそっぽを向いた小次郎さんに呆れながら少し可愛いと思っていると、梧桐田先輩とヒナコ先輩が一人の可愛らしい女の子に目をつける
『ひ、ヒナコ先輩!シャペル先生が睨んでます!早く壇上に!』
まるで茶番のような一連の騒動だったが、堂島先輩の雰囲気に辺りは静まる
「ようこそ。我が遠月リゾートへ。
今日集まった卒業生たちはオーナー・シェフ、もしくは副料理長だ。合宿の6日間君らのことを自分の店の従業員と同様に扱わせてもらう。
意味わかるか?
俺たちが満足する仕事ができないヤツはクビってことだ」
