第3章 【第1章】いつもの朝
朝、いつものように子鳥の囀りを聞いて気持ちよく目を覚ます…なんて、そんなのは最早ポエムの世界の話。
壱檎『待てゴラァアアア!!』
ジュダル『待てるかぁぁあ!!』
見慣れた滞在先の自分の部屋にまで丸聞こえの大声と廊下の追いかけっこの足音で目を覚ました私の機嫌は…言うまでもなく不機嫌だ。
チユリ『うるっさいなぁ…』
たまには漫画や小説の冒頭に良くあるような気持ちいい目覚め方をしたいものだ。
一つため息をついて着替えようとすると部屋の戸を叩く音がした。
おそらく、この世界で友人になった皇子とか皇女あたりだろう。
紅玉『チユリちゃん、入って良いかしらぁ?』
予想的中。
部屋の引き戸越しに聞こえたこの声の主は紛れも無く煌帝国第八皇女、練 紅玉だ。
チユリ『ごめん!ちょっと着替えるから待ってて!』
彼女は私が煌帝国に初めてきた時に出会った友人の1人であり、滞在先に誘ってくれた人である。
少しワガママで冗談や融通が聞かない所もあるが、本当は人一倍煌帝国のために色々と考えている立派なお姫様。
急いで着替えを済ませた私は、彼女を部屋に入れ朝食の時間になるまで他愛の無い会話をする。
紅玉『今日は芙蓉ちゃんの所に行くのよね?』
チユリ『うん。あ、玉ちゃんも来る?』
紅玉『あら、ご一緒しても良いのぉ?』
チユリ『うん!芙蓉達も喜ぶと思うし行こうよ。』
私は週一で友人のいる滞在場所へ遊びに行く。
今日は芙蓉の居るマグノシュタットが行き先。
紅玉『そうと決まれば、早く朝ごはん食べていきましょ!』
紅玉が席を立ち私の手を掴み食事場へ向かう。
部屋の外へ出ると神官と壱檎の追いかけっこが未だ続いてる。
ほんと毎日飽きないものだ…なんて思いつつも、紅玉に手を引かれてるので立ち止まることが出来ず着いて行くことにした。