第1章 月のうさぎは笑うのか?
[歴史遡行軍][歴史修正主義者]
そんな言葉が月に住まう神々の口から零れる日が増えた。
はじめは馬鹿にしたように、段々と苛立たしく、不安げになるその言葉。
うさぎはその言葉を呟く神々の、まるで苦い薬草を丸々飲み込んだようなしかめっ面が怖く、神々がその話を始めるとそっと耳を塞いでその場を去るようにしていた。
「…然らば、そのように。」
「月読の御柱におかれましては、ついに厄介祓いが出来てとても、喜ばしいことでございます。これ、タレ耳こちらに来なさい」
親兎と月読命の会話に何故か嫌な予感が走った。
しかし生みの親である兎と絶対的な服従の主である月読命の言葉には逆らえない。
うさぎは不安げに瞳を曇らせ、作っていた金丹を脇に置いて2人に歩み寄る。
「歴史修正主義者、と言う言葉を聞いたことはあるな?それを討伐するために人の子が作りし刀に宿る付喪神を利用した討伐隊を各神々が一ずつ作る。」
「喜べタレ耳。いくら薬草を育てても金丹を作ってもその無様な耳のせいで評価をされぬお前を月読命がその討伐隊の長へと推薦してくださった」
うさぎを睥睨しつつ、決定事項のように彼らは語る。
うさぎは胸のどこかが凍る様な心地でそれに頷くのだった。