第9章 仮装はいかが?【紅松】
「大丈夫だったか、トド松?」
そう言って振り返ったおそ松兄さんに泣きつこうとした時だ。
おそ松兄さんの体が後ろによろめく。
「いってぇじゃねぇか兄ちゃん?」
「あっれま~・・・タフなのね、おっさん」
おそ松兄さんの脚をそこに倒れていた男が掴んでいた。
僕を捕まえていたあのゴツゴツとした手と物凄い力。
兄さんもそれは感じているようで小さくやっべぇ~と呟いた。
男が思いっきり兄さんの脚を引く。
前方に倒れた兄さんは地面に手をついて力いっぱい掴まれた足をけり上げて後方に宙返りをして距離を取った。
あの握力から逃げ切るなんて・・・正直未だ健在の格闘センスに僕はあっけにとられていた。
おそ松兄さんはその辺にあった椅子を男に投げつけると僕の腕を引いて走り出す。
「何ボッと突っ立ってんだって!」
「わっ!?」
後ろでわーわーと男が吠えていたけど僕たちは振り向きもせず店を飛び出した。
さっきのバーが見えなくなるとこまで走ったところでおそ松兄さんが足を止める。
「はーはー・・・ったく、何絡まれてんだよトド松」
「ご、ごめん、はーはーはー、つい癖かな?言い返しちゃって」
てへっと舌を出して誤魔化した。
「まったく、癖で言い返して掘られちゃシャレになんねぇだろ!?」
「うん・・・って、え!!?」
僕はそこで今日一番てんぱった。
何でおそ松兄さんはあの男たちが僕を掘る目的であの店に連れ込んだことを知っているのだろう・・・
僕は恐る恐るおそ松兄さんに質問する。
「兄さん・・・どこから見てたの?」
「え?尻餅付いたところ」と言って舌を出すおそ松兄さん。
ちょっと、何それ!?
聞いてないんだけど!!
っていうか、じゃぁもっと早く助けに来てよ!
無駄に怖い思いしちゃったじゃん!
そう思うと物凄くむしゃくしゃしてきて僕は持っていたお菓子なんかが入った袋をおそ松兄さんに投げつけていた。
そしてそのまま家に向かう。
「ちょっとっ!トド松!?このお菓子貰っちゃうよ!?」
「うっさい馬鹿っ!もういらないっ!」
その後、この出来事を知ったチョロ松兄さんにおそ松兄さんはこっぴどく叱られた。
ざまーみろ!