第9章 仮装はいかが?【紅松】
10月31日
一松side
ハロウィン当日。
俺達は朝から慌ただしく準備をしていた。
既に着替えを済ませたおそ松兄さんはまだかまだかとブーブー言っている。
「メイクに集中できないよ、おそ松兄さん静かにしてて!!」
チョロ松兄さんの顔にシールを貼って特殊メイクを施していくトド松の顔も俺の顔もすっぴんのままだ。
それを見ていたカラ松が立ち上がってメイク道具とにらめっこし始めた。
「トド松、手伝おうか?」
「カラ松兄さん、できるの?」
「まぁ~、見ている感じだと演劇の時にやっていたこととあまり変わらない気がするんだが・・・」
その瞬間トド松の表情が変わった。
「そうだよ!カラ松兄さん何気に芸術の才能あったね!?じゃあ、一松兄さんのメイク頼める?」
まさかの自分の名前が挙げられて俺は慌てて首を横に振った。
「ちょっ、ヤだよ!クソ松なんてっ!」
「え・・・」
涙目になるカラ松。
だけどそんなことは今はそうでもいい。
メイクされるということは嫌というほど至近距離でガン見されなければならないということだ。
しかも兄弟の前でなんてとても耐えられないと思った。
だけど、トド松から厳しい一言が飛んでくる。
「一松兄さん、わがまま言わないの!黙ってそこに座って!」
「っはいぃいいっっ!!」
俺は思わず返事をしてしまった。
するとカラ松が立ち上がって引き出しをあさり始める。
何をしているのだろうかとその手元を覗いていると黒い小さな布を取り出した。
「何それ?」
「うん、仮装は恥ずかしいと言っていただろう?顔が見えなければ恥ずかしくないと思ってな・・・」
そう言ってその黒い布で俺の顔を覆うと両耳にそれをひっかけられた。
「どうだ?衣装に合わせて黒いマスクだ!これで顔半分は隠れるだろう?」
「う、うん・・・」
にっこりと微笑んでボディーペイントカラーとかいうやつに手を伸ばす。
その作業に俺は見入っていた。
慣れた手つきで必要なインクと筆なんかを準備して俺の顔に筆を向ける。
そしてその筆は俺の顔
ではなくマスクに向かった。