第9章 仮装はいかが?【紅松】
一松の手には大きなコウモリの羽を思わせる物が握られていた。
袋の中には鋭い牙と黒いハットも入っている。
「すごいなこれはっ!吸血鬼か!?」
豪華な衣装に驚いて声を上げるとトド松が「すごいでしょ?」と自慢げに寄ってきた。
「何気にカラ松兄さんの衣装が一番高かったんだよ?おそ松兄さんにも黒い羽根あるんだけどおそ松兄さんは羽と牙と角だけしか買ってないんだ、服は手持ちのスーツと変わらなかったから買ってこなかったんだよね。後の皆は小物とかそんなにないから」
見渡すと確かに、一松は着ぐるみ一つ、十四松はカボチャの帽子に黒いマント、トド松はピンクの幽霊を思わせる少しボロボロのワンピース、チョロ松は大きなボルトの付いたカチューシャに手持ちのスーツ、おそ松はさっきトド松が言っていた通りの衣装だった。
「僕とチョロ松兄さんと一松兄さんは少しメイクするけどね♪」
とメイク道具も買ってきたのか得意げにメイク道具を広げた。
「わ~、何このシール!?すごーい!」
「面白いでしょ!?これで素人でも簡単に特殊メイクができるんだよ?」
「「おお~~~~~」」
チョロ松と一松と十四松はメイク道具に夢中だ。
覗き込んでみると、傷口を模したシールやボディーペイントカラーなんかが並んでいた。
わいわいと子供のように盛り上がっている弟達をにかーっと笑顔で見つめるおそ松の傍に行く。
「おそ松、どういう風の吹き回しだ?」
「え~、何がぁ~?」
「何がって、この衣装代お前が出したんだろ?」
「トド松も少し出してくれたよ?今日、二人でパチンコに行ってさ、増えた分全部つぎ込んだの~」
はぁ~と大きなため息をついてはいるがどこか満足そうだ。
「おそ松もハロウィンとか興味があったんだな?」
「だ~か~ら~、俺は別に興味ないよ?でも、可愛い弟がやりたいっていうんだからたまにはね?」
そう言って鼻の下を擦る。
なんだかんだ言ってもやっぱり長男だ。
トド松の嬉しそうな顔を見てまたにかっと笑うおそ松を見てそう思った。