第2章 第1Q
side.桃井
今日から、私は一軍のマネージャーをする事になった。…のだけど、
「ま、相手は誰でも良いんで。先輩からにしますか?」
「…いや、君からで良いよ(面白そうだから)」
「それでは、オレが審判をします。ルールはどうしますか?」
この状況は何⁉…スポドリの片付けとかしてたら、四季咲先輩と大ちゃんが何故か1on1でゲームするって言ってて…!
「五本先取で勝負しよう。それが一番“早い”」
「良いぜ。早く始めねぇか?」
ああぁ…大ちゃん、いつもの口調に戻っちゃってるよぉ!相手は先輩なのに!
考える間もなく、試合は始まった。
「…始め!」
試合開始の合図と共に、大ちゃんが一直線にゴールへと走り出した。
「よっと…」
そのまま大ちゃんがシュートを打つが…
バッ…
「…まだ甘いんじゃない?大輝」
四季咲先輩が、大ちゃんをブロック。
「やっぱり面白い。スピードもパワーも充分。今はまだはっきりとは言えないけど…PFが向いてるかもね…っ」
そこで、先輩は高く跳躍し、シュートを打った。
パッ…
「まあ、私を止められるかは別としてね」
先輩のシュートは、綺麗に決まった。流石、としか言い様がなかった。この力は、長い年月を経て得たモノなのか…はたまたこの人自身の“才能”なのか。
「ハッ、おもしれぇ…」
大ちゃんがその言葉を切っ掛けに、本気を出した。やはり、何処かで先輩は女だからと加減してやっていたのだろう。
だが…
「試合終了!勝者、四季咲先輩!」
勝ったのは、四季咲先輩の方だった。
「ハァ、ハァ…!っありがとうございました‼」
大ちゃんが先輩に向かって頭を下げた。
「此方こそ、ありがとう。君は…、ううん。
次は私に勝てるように頑張ってね」
「っはい!」
大ちゃん、良い笑顔してる。久し振りに強い人に会ったからかな?
「じゃ、他も1on1して良いよ。チームプレーでも良いし。それか、休憩でも。私も少し疲れちゃったみたいだからね。外に行ってくるわ」
先輩は直ぐに歩き出して行ってしまった。
そういえば…
何で先輩は、長袖のままで試合をしたんだろう。
まだこんな季節だけど、練習後で汗もかいていて、暑かった筈なのに。
何でだろう。