第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「ゾロ・・・」
ああ、本当に不思議。
強引に部屋に連れてこられ、
ベッドに押し倒され、
胸をはだけさせられ、
自慰の手伝いをさせられたというのに・・・
私は貴方を拒絶する気にはなれない。
「ははは・・・ヤバかったな。おい、ちょっと抱きしめさせろ」
ゾロは笑いながら隣に崩れ落ちると、抱き枕とばかりにクレイオの身体を抱き寄せ、髪に顔を埋めた。
「貴方は下半身丸出し、私は上半身丸出し・・・滑稽の極みとは、このことね」
「じゃあ、二人とも全裸になるか? そしたらおかしくねェだろ」
「・・・・・・・・・・・・」
───それも悪くないかもしれない。
そう言いかけて、止めた。
「ゾロは・・・どうして私を抱きたがるの?」
「あ? 前にも聞いてきたな、ソレ」
“そりゃお前・・・すげェ腹が減っている時、目の前に握り飯があったら食いてェって思うだろ。それと一緒だ”
「今もあの時と同じ答えなら・・・私は一生、貴方に抱かれるつもりはない」
「・・・・・・・・・・・・」
クレイオを抱くゾロの手がピクリと動いた。
しかし、あの時と違う答えがまだ彼の中にはないのか、口は真一文字に閉じられたまま。
クレイオは小さく溜息を吐いた。
「ゾロ・・・私は小さい頃、女の人は処女のまま妊娠することができると信じていた」
「・・・?」
「聖母様のように、神に愛されれば御子を宿すことができると・・・」
母は神に愛された人で、私は聖霊によって生まれた子だと信じていた。
否、そう信じる事で言い知れぬ寂しさを紛らわそうとしていた。
「もちろん、今は処女のまま妊娠することはできないと知っているし・・・私も処女ではない」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから分かったの・・・」
聖母様は一人で赤ん坊を生み落としても、常に神から最も愛された存在だった。
その御子も同じ。
でも・・・私の母親は・・・?
「愛情などなくても、人は欲望のままにセックスをすることができる。その欲望の果てに、望まれぬ赤ん坊が生まれようとも」
だからゾロ・・・私は貴方に抱かれるわけにはいかない。