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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)





恋を知らず、美しいものを知らず、ただ人目を避けながら生きてきた77年。

ある夜、醜女は夢を見た。
それはとても甘く、とても美しい夢だった。

その日はとても暑かったので窓を開け放して寝ていると、真っ白な月明かりの中から一人の少年が現れた。
そして、老婆に向かって日焼けした手を差し出す。


「好きな所へ連れてってやる。どこへ行きたい?」


ししし、と笑うと、少年は躊躇わずに老婆を抱きかかえた。

細い腕だが温かく、力強い。
夢とは思えないほどリアルだった。


「しっかりつかまってろよ」


少年は翼がないのに、鳥のように夜空へと羽ばたいた。


ヒュウッと風を切る音。
不思議と恐怖は無い。

見下ろせば、家々から洩れだす明かりが真っ黒なベロアの布に宝石をちりばめたような、幻想的な世界を生み出していた。

少年はきっと、死期が近づいている老婆に最後の夢を見せるために現れた、妖精だったのかもしれない。

妖精というにはあまりに命知らずでワガママ、さらには大食いだったが、彼はとても魅力的だった。

そして、彼の“瞳に映るもの”を見せてくれた時、老婆は生まれて初めて幸福を覚え、彼の腕の中で涙した。


「おれのこと、忘れんなよ・・・クレイオ」


誰も知らない、たった二人で過ごした優しく儚いひと時。



これから紹介するのは、麦わら帽子を被った少年が醜女の老婆に見せた、真夏の夜の夢である。









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