第17章 恋愛初心者*
黄瀬君の息づかいが聞こえる度に、胸が苦しくて呼吸をするのさえも困難になる…
「アッ……ッ…!ダメ!擽ったいよ……」
なんだか変な感じがする今までに経験した事がないような、この気持ち…怖くなってくる。
「嫌…!やめて!!!」
黄瀬君の胸を思い切り押しのけちゃった…
その瞬間、ハッとして黄瀬君を見ると…顔が引きつっている。
「ごめん…なさい…あの…違うの。」
「ごめん!桜!!急にこんな事して、怖かったッスよね?ごめんね?」
違うの、確かに怖かったけど…黄瀬君が怖かったわけじゃない、自分自身が怖かったんだ。
黄瀬君がこんなに近くにいて、私に沢山のキスを降らせてくれて…
もっとして欲しい…
そう思う自分がなんだか怖くなって…どんどん欲深くなっていくのが図々しい気がして…つい最近まで恋なんて知らなかったのに…
「桜、大丈夫?オレ、調子に乗りすぎたみたいッスね。桜が彼女になってくれたのが嬉しくて、もっと触れたくて少し焦っちゃったッス。ホントにごめんね?」
「違う!!!そうじゃないの!」
声が大きくなる。
「桜…?」
「もっと……ッ…」
「もっと??」
「もっと触れて欲しいって思っちゃった自分が怖くて、まだ彼女になったばかりなのに…図々しいなぁって…だから…その嫌じゃ…な…!!」
黄瀬君の長い腕が私をスッポリと包み込む。凄くキツく抱きしめられているのに…そこには、優しさと温かさが充満していた。
「桜…オレも、もっと桜に触れたいッス…イイ?」
「うん……」
黄瀬君の欲情を滲ませた瞳に誘い込まれる。
それは、ごく自然に…流れに身を任すように…私達は、初めてのキスをした。
「ヤッバ…ちょー幸せ!桜の唇柔らかくて、そのまま食べちゃいそうッス!」
「…もうッ…!!」
「桜…もう一回…」
「…ンッ…」
頭がボーっとする。このまま時間が止まって欲しい…好きな人との初めてのキスの味は、甘いとか酸っぱいとかそんな事を考えてる余裕なんてなかった。
ただ…幸せだった。