die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第8章 episode.8
「ふっ…。やはり…。
貴女はそう言う、浅はかな女性なのですよ」
屋敷の窓辺で、報告に戻って来た使い魔を再び放つと、登ってきたばかりの月がそれを照らした。
「私が忠告しても、この月明かりの下、貴女はまたライトに吸血させて…」
いや、ライトと行かせればこうなる事は分かっていた。
貴女がそう言う女性なんだと思えば、簡単にこの苛立ちも鎮まると思っていました。
「試した私が間違っていたのか…。
結局…こんな…!」
それが、図らずも自分の気持ちを再確認することになろうとは。
胸の奥の重い痛みが焼けそうに熱く、心を支配していく。
あのまっすぐな瞳を、彼女の笑顔を、自分自身の側に置いておきたいのだと思い知らされる。
気持ちを掻き乱されて冷静さを欠くなど、あってはならない。
しかし、窓枠を叩いてみた所で、鎮まりそうにない苛立ち。
これでは、調査どころではないではありませんか。
彼女が、兄弟の誰かのものになる位なら…。
何かの策略かもしれないと知りながら、自らその罠にかかるしかないのか。
数日後満ちる月を背に、疼く牙と胸の奥の熱を、理性と言う名の箱に無理矢理押し込んで蓋をした。