die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第6章 episode.6
咄嗟に目をぎゅっと閉じていると、笑い顔にはっとさせられた。
「ククッ。ハハハハハ…。
何て顔をしているのです?
自らを差し出す覚悟もないのなら、近付かない事です。
もう結構です、戻りなさい」
「…はい…。
失礼します」
どうやら私は、からかわれていたみたいだ。
一礼して屋敷内に向かう。
「腕を怪我しているようです。
手当しておくように」
後ろから声を掛けられて立ち止まり見ると、前腕部あたりに小さな引っ掻き傷があった。
血が流れるほどではないけれど、少し赤くなっている。
痛みが無かったから気が付かなかった。
さっき猫が暴れた時についたのだろう。
「はい。
ありがとう…ございます…」
傷部分を押さえて屋敷内に戻る。
今夜は平和な夜になりそうだったのに、ザラついてしまった気持ちを抱えながら救急箱の蓋を閉じた。