• テキストサイズ

die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第23章 episode.23


レイジさんの飛ばした使い魔からの伝言により、ヴァンパイアの王と謁見する為、告げられた時間前に控えている。


「はぁ〜…」


私はやたらと緊張していて、何度目か分からない深呼吸をした。


目を覚ました時は動けなかったけれど、レイジさんが食事を作ってくれて、今はだいぶ回復していた。


こちらに来てから、すっかり食事を作って貰う事が増えてしまった。


そう気軽に食事に出掛けたり出来ないし、城の厨房はおそれ多くて、お手伝いをするのもはばかられた。


手首のアクアマリンを触るのはすっかり癖になってしまっていた。


きっと大丈夫だと、戻る事が出来るとレイジさんは言ってくれた。


それが叶った時には、今度は私が美味しいものを沢山作れるように勉強しよう。


それに今は、この緊張が少しでも和らぐようにと願いながら手元の淡い石に目を落とした。


昨日の、いつもと違った吸血の理由は分からない。


けれど、疑問に思うと同時に、それ以上の満たされた気持ちが私を占めていた。


吸われているって言うのに、満たされているなんて奇妙な話だ。


思わず苦笑してしまった。


でも、これは確かに事実だった。


レイジさん、まだかな。


この部屋で待つように言われて少し経つ。


目の前のティーカップに鼻を近づけると、広がる花のような香りに少しは落ち着ける気がした。
/ 316ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp