die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第17章 episode.17
抱き抱えられて着いたのは私の部屋ではなく、レイジさんの部屋だった。
ドアを開けて中に入り、ベッドに降ろされる。
「今日はここで寝て下さい」
「え…私…、部屋に戻ります。
これ以上迷惑は…」
ベッドから降りようとすると、水滴のついたグラスが目の前に突きつけられた。
「何度も言わせないで下さい。
今、貴女を一人にする訳にはいかないんです。
飲みなさい」
「………」
差し出されたグラスを受け取り、傾ける。
よく冷えている水…。
「…はあ〜っ。
…美味しい…」
火照った頬にグラスを当てると気持ちがいい。
レイジさんは私の手から空いたグラスを取るとテーブルに戻し、私の髪のタオルを外すとわしわしと拭いてくれた。
「あ…そう言えば、お風呂にドライヤーが無かったんです。
誰かが持って行っちゃったんでしょうか?」
「はぁ。
貴女は呑気なものですね。
こちらがどれだけ気を揉んだか…」
「あ…」
視界が遮られていたタオルがどけられると、レイジさんの手にドライヤーがあった。
「撤去しておくよう、使い魔に指示しておいたのですよ。
一人になった時、貴女が早まらないよう、あらゆる可能性を考えてね」
…そんな事まで考えてくれて…?
使い魔に…?
そうだ…使い魔…!
乾いた熱い風が髪を通り抜けていく。
思わず目を閉じ、動かされる指に身を委ねそうになる。