die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第15章 episode.15
力が…だんだん入らなくなってきた…。
私が抵抗出来なくなってきたのを確認して、スバルくんが手を緩めた。
はぁ…さっきのは…麻酔薬?睡眠薬?
もう…動けない…。
身体に浮遊感がある。
抱き抱えられてしまったのだろう。
うっすらと見える視界を見上げると近くにレイジさんの顔が見えて…。
「…レイジ…さん……降ろして…くだ…」
遠くの空には細い三日月が白く清らかに輝いていた。
だめ…。
お願い…。
薬はすぐに効いてしまった。
薄れゆく意識の中で、声を聞いた。
「まったく、手間を掛けさせないで下さい…。
…帰りますよ」
真っ暗闇。
ここは…何処?
「…くっ…」
心が…痛い。
引き裂かれてしまいそう。
堪らず胸を押さえる。
溢れる涙は流れるままポタポタと床に落ちる音がする。
目の前に現れた差し出される手…。
「大丈夫…絶対大丈夫だから…安心して」
どこからともなく声がした気がして掴もうと手を伸ばす。
掴めたと思った手は、ズルズルと腐り果てたように地に力なく落ちる。
私が掴みさえしなければ…。
私のせいで…。
「ん〜。
ず〜っとうなされてるね、マイちゃん」
リムジンの中眠りながらうなされ涙を流している。
「クソ…」
見てらんねぇ。
何があったんだよコイツに。
睨んだ先のレイジはマイが流す涙を拭い続けていた。