die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第12章 episode.12
歩いていると、屋敷に来る前に好きだった雑貨屋さんの支店が目に入った。
「あ…このお店、見てもいいですか?
一般的な物なのでレイジさんは気に入るか分かりませんけど、食器も売ってます」
「ほぅ。
では見てみましょう」
お店に足を踏み入れると、素敵な店内の装飾に気持ちが華やぐ。
レース小物やパールのアクセサリー、ランチョンマットやシルクフラワー等が食器類と共にセンスよく飾られている。
アンティークな高級品があるわけじゃないけれど、このお店オリジナルの水色の縁取りの食器類は色と形が好きでよく眺めていた。
「私、これが好きなんです」
レースのドイリーと一緒に飾られたカップを私が指差すと、手にとってくれた。
「ふむ、悪くない色ですね」
「本当ですか?
そう言って貰えると何だか嬉しいです…」
「別に、こう言ったカジュアルなものを好まない訳ではありませんよ」
「ふふ、良かった…。
眺めているだけで幸せな気持ちになれるので」
「…では、これを買いなさい」
「あ!
いえ、そんなつもりでは」
「何故です。
気に入っているのでしょう。
なら買えばよろしい」
レイジさんは手に取っていたカップとソーサーをカゴに入れている。