die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第10章 episode.10
遠くの雲が風でゆっくり動いてく。
目を閉じて耳を澄ますとひばりのさえずりが透き通り、草の匂いが鼻をくすぐる。
強い風が通り抜けて、飛びそうになった帽子を押さえてくれた手を振り返る。
「ありがとう」
「風が強くなってきたから冷えますよ」
肩にストールを掛けてくれた手がそのまま肩を抱いて包んでくれる。
息苦しくなって身じろぐと軽く頰にキスされた。
「ふふ…貴女は可愛いひとですね」
近付く唇に目を閉じた。
—
———
パッと目を開ける。
いつもの天井…
いつもの部屋…。
今の、夢?!
赤くなってるであろう顔を覆い隠す。
さっきの…レイジさんと私だったよね…。
何て夢を見てるんだ私は。
恥ずかしい…。
昨日少し長い時間一緒に過ごして、最後に撫でてくれて…。
余程印象に残ってたんだろうな、私…。
「う〜ん…」
気を取り直して、ベッドの上で伸びをする。
よし、今日もお掃除頑張ろう。
この屋敷のバスルームは広くて、猫足だからとても気に入ってる。
今日はバスルームを念入りに掃除する事にした私は、まず洗面台から手を付けた。