die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第9章 episode.9
「とても美味しかったですし…。
ケーキは見た目も綺麗で、食べるのが勿体無いくらいでした。
ご馳走様でした」
エプロンを外して会釈する。
「………」
「レイジさん?
どうかしましたか?」
手が止まったので気になって顔を見ると目が合った。
身長が高いから見下ろされてる。
何か、言わなきゃ…。
前髪にふわりとした感触。
撫でられてる…。
「あ、あの…」
「貴女の働きは今日私を助けましたので…。」
何度も往復する手が心地いい。
「フッ。
何ですか無防備な動物のような顔をして…。
では、失礼しますよ」
呆然とする私を残して、キッチンから出て行く。
…なんだろ、今の…。
頭がぼうっとしてる。
またからかわれたのかな、私…。
早鐘を打つ心臓に気付いて、大きく深呼吸した。