第3章 Ⅲ
『それと変わった香りのモノには近付くなとも言いました。お忘れですか?』
長い指で私の頬に掛かる髪を耳に掛ける。
触診は終わったようだ
「離れようとしたよ?でも、階段から落ちそうになってライトくんに抱きかかえられて逃げられなくなった。」
チラリとレイジさんを見れば呆れた顔をしていた
『はぁ・・・。』と、ため息付きだ。
「でも!シュウが助けてくれたから何もなかった。」
意外そうにレイジさんは言う
『シュウ・・ですか?』
私は縦に首を振る。
『それは面白いですね。』
「・・レイジさんすごく悪い事考えてる顔してるよ?」
『そうですか?それは失礼。さぁ食事にしましょうか。』
「その前にシュウに上着返して来る!」
レイジさんは少しの沈黙の後応えた。
『では私は先に食事の準備をしていましょう。』
「はい。」
レイジさんが私の部屋を出て私も部屋を後にしようとしたが、ふとライトくんの言葉が甦る。
【みせびらかすような】
不安になって鏡を見る
うん いつも通りだ。
変じゃないし、みせびらかすような恰好でもない。
・・・と言うかシュウに上着を返すだけだし服装なんてなんでもいいよね!
変なの。
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────
シュウの部屋の扉を叩く。
「シュウ。入るよー!」
シュウは・・・やっぱり寝てる。
ソファーにシュウの上着を掛けベッドに腰を下ろす
髪サラサラだなぁ。
少し邪魔そうな前髪を梳く
今更だけどシュウは整った顔をしている気がする。
きっとシュウの彼女は嘸かし鼻が高いだろうな...。
「っ・・・!」
例え難い感情が胸いっぱいに拡がる。
この嫌な気持ちはなんだろう?
レイジさんに薬用意してもらおうかな
そんな気持ちをかき消す様にクシャクシャとシュウの髪を撫でる
「私シュウに助けてもらってばかりだ。なにか出来ることないかな?」
大きな独り言。
『・・ある。さっさと出て行け。』
鬱陶しそうに私に背を向ける
驚いた...
「シュウ起きてたの!?」
『今起きた。又寝る。だから出て行け。』
いつもなら気にせずシュウを構い倒すのに・・・それを嫌がられてしまいそうで出来ない
おかしいな・・・いつも通りのシュウなのにな。
何故だかとても哀しくて急いでシュウの部屋を出た。