第13章 チョロ松の台本 愛のむきだし編
主人公視点
わたしは一人、スタバァに来ていた。
二人が初めて話したカウンターの奥の席に座っている。
(相変わらず、ここの席人気がないなぁ…)
どんなに混んでいてもいつも空いているこの席は、出会ったばかりのわたし達の待ち合わせ場所だった。
ここで時の経つのを忘れるほどおしゃべりして、笑いあって…。
ぎこちなかった彼の笑顔が、だんだん柔らかくなっていったのが嬉しくて…。
思い出が溢れる場所に逃げ込んだのは、失敗だったようだ。
また、涙が溢れてきてしまう。
(チョロ松くん…それにみんなも…なんであんな事したのかな…)
よくよく考えれば、もっとチョロ松くんの話を聞いてあげればよかったのかもしれない。
だけど、あの時はみんなに会うのを楽しみにしていた気持ちを嘲笑われたように感じてしまい…。
戸惑ったわたしはあの場から逃げ出すことしか出来なかった。
(しかも…チョロ松くんに向かってきもちわるいって言っちゃった…)
減らないアイスコーヒーは、結露でわたしの指を湿らせている。
ハンカチで指を拭いていると、隣に人影が見えた。
「となり…いいですか?」
見上げると、
「……どうぞ」
まぶたを腫らしたつぶらな瞳がそこにはあった。