第11章 Red Trick~織田信長~
「ほう……理由があるのじゃな。
ではやはり、同意の上で事に及んでおった訳では無い……
そう言う事で良いの?」
義経は明白に『してやられた』という顔をする。
既に着衣を整え終えた与一が俺の横に擦り寄っている事も面白く無いのであろうな。
「おお、おお……可愛い与一。
お前には辛い思いをさせてしもうたの。」
俺が態とらしく悲痛な表情を浮かべ与一の身体を抱き寄せると
「信長殿……こんな私をお許し下さいますか?」
与一も無駄な科を作り俺に縋り付いた。
全く……俺も俺だが与一もようやりおるわ。
笑い出して仕舞いそうになるのを耐えながら、俺はこの阿呆らしい猿芝居を続ける。
「儂にベタ惚れの与一がこんな下衆野郎の言うままになるなど
余程大仰な条件を出されたのであろう?」
「はい……信長殿、実は……」
「良い良い。
皆まで言うな。
与一が己の意思で此奴に身を任せたので無ければ
儂はそれで良いのじゃ。」
「ああっ……信長殿!」
与一は俺の胸に顔を埋めて肩を震わす。
ふとその顔を見下ろして見れば、声を殺して笑っていやがった。
おい、もう一寸辛抱しろよ。
俺まで吹き出しちまうじゃねえか。