第11章 Red Trick~織田信長~
そう、人と言う物は憎悪、悋気、憤怒……そう言った邪な感情に捕らわれれば正常な思考が出来なくなるもんだ。
そうさせておいて逃げ場が無くなるまでとことん追い詰める。
それが、俺の遣り方よ。
それが、俺を第六天魔王と言わしめる所以よ。
真っ正直なお豊(トヨ)には逆立ちしたって出来ん技だわにゃあ。
俺と与一の猿芝居に完全に嵌められておる様には見えんが、それでも義経の動揺を誘うには充分だったようじゃ。
そこで俺は一気に畳み掛ける。
「この与一を動かした条件……
それは恐らくについての事だろうて。
貴様はの居所を知っておる。
…………そうじゃな?」
「そうだとしたら……どうだって言うのさ?」
冷静さを装っても、虚勢を張っておるのが丸分かりだぞ。
ふふん……若いのう。
「貴様を捕らえ、と交換する……
いやいや、貴様にはその価値は無さそうじゃ。」
「本当っ……失礼なジジイだね。」
笑顔でありながらも義経の本気の怒りが伝わって来る。
予想通りの展開じゃ。
「命を落とす一歩手前まで呵責を与え続け
貴様の口から聞き出す……なんて事も可能ではあるが
それもまた面倒臭い。」
俺が独り言の如くぶつぶつ呟くのを不審さも顕に見つめる義経に、俺は最後の手管を突き付ける。
「良し、貴様。
俺達の仲間になれ。
そしての居所を教えろ……
いや、そこまで俺達を連れて行け。
何ならを救い出すのに手を貸せ。」