第11章 Red Trick~織田信長~
「察するに……貴様は『義経』か?
儂よりも四百年先に生きておられたのだから
一応、敬意を払うべきなのだろうな。」
「ふん……話が分かるジジイだね。
悪くない。」
「うんうん。
源平軍記には儂も心を踊らせたわい。
あの源義経………知略に優れ、謀を巡らし戦う………」
俺の賛辞に義経の顔色は夜郎自大に変わる。
どうやら御し易い男のようだの。
「それが実際はこんな矮小で噴飯物な男だったとは。
実に驚きじゃわ。」
「……………なっ!」
俺は必要以上に煽ってみせた。
義経は案の定、無様に顔を歪ませて怒りで言葉も出ない様だ。
ふはは……愉快で堪らんわ。
「ささ……与一。
そんな雑魚の相手をする必要は無い。
早々に身を整えて戻ろうぞ。」
そこは流石の与一。
どうやら俺の策を理解した様子で、無言のまま立ち上がると着物を身に着け始める。
「一寸待てよ。
何故与一が僕に傅いたのか……
理由を知りたく無いの?」
ほら、来た。
そんな事を自ら口にすれば『何か条件を出して』与一を嬲っておったと白状したのと同じではないか。