第12章 楽しい楽しい林間合宿
私はまぁ、ある意味有名人だ。今でも、普通に街中で、私を見て涙ぐむご老人の姿は見受けられる。…しかし、私のあの事件はこの歳の子でも知っているものなのだろうか?私は慎重に言葉を選んで答えた。
「…ううん。私の両親は、お医者さんだったの」
「…そうか」
何やら、彼が期待していた返答ではなかったようだ。項垂れる彼に私は慌てて聞いた。
「洸太くんの御両親はヒーローをやってらっしゃるの?」
「……だったんだ」
消えるような声で彼はそう答え、私はさらに自分がミスったことを悟った。だった。…つまり、彼の両親は…
「…そっか。それで?私に何を聞きたいの?」
私がそう問いかけると、彼は迷うように帽子のツバを深く被った。
「……別に。ただ……俺と同じ人…初めてだったから…」
同じ人。つまりは、ヴィランによって肉親を殺された人という意味か。そう言えば、エンデヴァーの隠し子として賑わいを見せた時、多少なりとも私の過去を掘り下げるテレビ局もあったっけ。彼はそれで知ったのかもしれない。
「……そっか。じゃあ、私達は仲間ってことだね」
微笑みながら、彼の手を握ると、柔らかくて温かなその手はしっかりと握り返してくれる。
「……あのさ……」
「ん?」
洸太くんが私に質問を投げかけようとする。しかし、そこで邪魔が入る。
「おい、何してんだ」
轟だ。轟が来た途端、洸太くんはパッと手を離し、ダッシュで去っていった。………まじか…
「……油断も隙もねぇな…」
そう呟く轟に、私は呆れた顔を見せる。
「ねぇ。轟って、空気読めないねって…言われるでしょ」