第12章 楽しい楽しい林間合宿
1時間が経ち、バスがパーキングエリアに到着する…そういう話だったが
「あれ?パーキングエリアは?」
見晴らしのいい場所で、誰がどう見てもパーキングエリアじゃないところにバスは停車した。私は嫌な予感しかなく、バスを降りるのを最後まで躊躇した。
「高いところが怖いのか? 手を握っててやろうか?」
ズレた轟はそう言って、私の手をむんずと掴む。違う…違うんだって…!!
「煌めく眼でロックオン!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!」」
私たちがようやくバスを降りた頃、猫を連想させるコスチュームに身を包むキャリア12年、心は18歳のヒーローたちがばっちりとポーズをキメていた。
「……あれ、なに?」
「……さぁな」
首を傾げる私たちに、すかさずヒーローオタクの緑谷の説明が入る。私達はなるほどと頷いた。ありがたい。
「あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」
「やけに遠いな」
「うん。やっぱりそういうこと?」
「…多分な」
私はため息をついた。話が進み、12時半までにたどり着けなかったら…という、台詞に皆が皆、確信を持った所で……
「悪いね諸君。合宿はもう始まっている」
という相澤先生の声が聞こえ、逃走を図った皆が、金髪の女性の個性により盛り上がった土砂に崖の下に押し出される。うわお…。私は轟の手を離した。
「夜蝶!!」
…いや、そんな今生の別れみたいな顔をしないでよ。