第12章 楽しい楽しい林間合宿
「夜蝶、トイレ行かなくても大丈夫か?」
「夜蝶、携帯の見過ぎは吐くぞ」
「…………夜蝶、喉乾かねぇか…」
「…轟、もうその辺にしてやれよ。犬猫山ゲンナリしてるぞ」
瀬呂くんが止めてくれて、ようやく隣の轟がそうか?と口を閉ざす。
「そうだよぉ!! 私がてふてふちゃんの隣に座ろうと思ってたのに!!」
振り返って轟にあっかんべーをする三奈ちゃん。めちゃめちゃ可愛い。
「すまん。だが、俺の方が夜蝶の隣に座りたかった」
轟の発言に私は頭を抱えた。こいつの私を構いたがるの…段々悪化していってないか?
「おい!! さっきからうっせー!!それに、きめぇんだよ!!!!!! こっちは寝てぇんだ舐めプ野郎!! 兄貴ぶりてぇんなら他所でやりやがれ!! ぶっ殺すぞクソが!!」
そう。私たちが兄弟となったのは、A組どころか世間も周知の事実となった。その理由は、1週間前の新聞にある。
「にしても、2人が兄弟だったなんてな!! 全然、似てねぇけどよ!!」
そう。私が職場体験で故意的にやったあれだ。あれが今更、ニュースとして取り上げられ、そしてエンデヴァーがそれについてコメントをするまで至った。その時のコメントはこうだ。
「アレは俺の娘だ」
と。言葉が確実に足りない!! 美談にすれば良いものの、何故か彼はそれをしないのだ。……エンデヴァー、やっぱり不器用人間なんだな、とテレビの前で死んだ目をしながら私は思ったものだ。
「はぁ……っていった!?」
突然後ろの爆豪が、思いっきり私のシートを蹴りあげ、思わず私は悲鳴を零す。
「ちょっと、かっちゃん!! シート蹴るなんて、足癖悪すぎ!! めちゃめちゃ痛かったんだから!!」
「あ? そこに座ってるてめぇが、わりぃんだろ」
「なにそれ理不尽!!」
ギャーギャー言い合っていると、私たちのやりとりを見ていた切島が一言。
「なんか、夫婦漫才みてぇだな」
「「はあ!?!?」」
そして、それに轟が反応し、
「爆豪。すまんが、夜蝶は結婚しねぇからな。諦めてくれ」
「うっせーぞ!! 誰がするか、舐めプ野郎!!!!」
と、益々収集がつかなくなり、とうとう相澤先生のお怒りの鉄槌が降りたことは言うまでもなかった。