第12章 楽しい楽しい林間合宿
「…名前呼ぶなよ。お忍びで来てんのに、意味ねぇだろ」
影から声だけ出す死柄木。私はため息をついて、壁にもたれかかった。前を人が大勢通り過ぎていく。誰も私の独り言なんて興味無さそうだ。
「……何しに来たの? あんたがショッピングなんて可愛い趣味持ってるわけないでしょ?」
「別に。ただお茶しに来ただけだ」
……こいつに茶飲み仲間なんていたのに驚きなんだが。
「…騒ぎは起こしてないでしょうね」
「…………」
おい、なんか言え。しかし、何故か久々に会った死柄木は、機嫌が良さそうだった。ヒーロー殺しの件で、不機嫌だと聞いていたのに……つまんないの。会った時、精々茶化してやろうと思っていたのに、これじゃ拍子抜けだ。
「おい」
「私の名前はおいじゃない」
このやり取りももう飽きるくらいしたな。その度に、こいつはお前なんておいで十分とか言って…
「…………夜蝶」
私は思わず振り向いた。こいつが私の名前を素直に呼んだ?明日は槍が降って、天変地異か!!!!
「次は、黒霧じゃなくて、俺に会いに来い」
「はぁ?何子供みたいなことを言って………」
あ、いやこいつは子供みたいなもんだったっけ?しかし、思わず振り返ったが、そこには既に死柄木の姿はなく、シンッと静まり返った通路があるだけ。……結局、あいつは何しにここに来たのだろう…人混みなんてあいつ、嫌いだったはずなのに。
「あ、いた!!てふてふちゃーん!!!!!!」
三奈ちゃんの声が聞こえ、私の意識はそちら側に移った。しかし、段々近づいていくと、こっちに来ているのは三奈ちゃんだけじゃなかった。
「犬猫山!! 大変だ!! 緑谷がヴィランと遭遇したって!!今麗日が警察呼んでくれてる!!!!」
………あいつめ、やっぱりお茶飲みに来ただけじゃないじゃん!!!!!!!!!!