第1章 限界と快楽 #折原臨也
貴方side
『っ…ぁは…っ』
身を捩る度、手枷が冷たい金属の音を鳴らす。
その音が耳障りで仕方がない。
『は…っ早く…』
先ほどから、机の上に置かれている時計を見つめているが、部屋の主、折原臨也は約束の時間になってもやって来てない。
自分の洩らす吐息が少し艶っぽいのが恨めしい。
『ん…っ何やって…』
私は、12時間前の事を思い出しながら呟いた。
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臨也「俺ちょっと出かけてくるから、手出して」
臨也は前触れ無くそう言った。
『は…?』
疑問を投げかけたままの私を気にしていないようで、躊躇い無く私の手首を掴み、枷をつけた。
『ちょっ、外してよ!』
臨也「駄目だよ」
彼は笑いながら言って、手枷の先を机の脚に留めた。
そして、見下すように、それでいて楽しそうに私を見つめながら私の太ももをそっと撫でた。
臨也「君さ、さっき俺と一緒に飲んだもの憶えてる?」
『何って、コーヒー…?!』
そこまで言って、私はやっと真意に気づいた。
コーヒーに含まれているのはカフェイン、そしてそのカフェインには“利尿”作用がある。
しかし、気づいてからでは遅かった。
それを自覚したからか、僅かな尿意を感じた。
『えっ、ちょっと嘘でしょ?』
いつものファーコートを翻し、裾に空気を含ませながら羽織る嫌味な男に向かって叫ぶ。
臨也「漏らしたら、分かるよね?」
薄く微笑んだ唇から見えた白い歯が怪しく見える。