第8章 夏の始まりと合宿と…
「今日で合宿は終わりだ。明日は朝から帰宅組と九州組とで別れるから、朝の走り込みは無しだ。合宿の最後らしく、気合い入れて稽古しろよ。」
はい、と部員全員で声を揃えて返事をする。
「九州組?」
夢主(妹)の質問に、
「玉翔旗(*注)に参加する事になったんだよ。うちの学校は初参加でね。さすがに九州まで行くには交通費や宿代がかさむから、出場する部員のみで行くことにしたんだ。」
なんだかすげえ嬉しそうな顔して、井上先生が説明した。
(*注 玉翔旗は実際の大会名を一文字変えてます。実際に古くからある大会を参考にしてます。)
合宿に集中してて忘れてたけど、すげえ楽しみだ!
「玉翔旗か。新八がなぎ倒してた頃が懐かしいな。」
「総司の他に斎藤君や平助もいるからね。今年こそはと申し込んだんだよ。」
「近藤さんも見てえだろうな。」
左之先生と井上先生が楽しそうに話してる。
玉翔旗は団体戦であって勝ち抜き戦だ。
大将は絶対総司先輩だよな。
総司先輩まで回るのか?
何故なら俺が全勝するから!
やっべー楽しみだ!!
「っしゃー!!!」
思わず気合を声に出したら、
「平助うるせー!!!」
って土方先生に怒鳴られたけど、知らね。
素振りから始まる1日のトレーニングメニューを張り切って始めた。
体の奥底から湧き上がる高揚感が、自然と掛け声をでかくする。
「平助先輩のかけ声って、よく通りますね!私も負けてられないや。」
隣に並んで素振りをする夢主(妹)が、満面の笑顔で言ってきたもんだから、その笑顔に思わず見惚れた。
「平助!素振り止まってるぞ!!」
「は、はいっ」
ちきしょー。
そう思いつつ、横の夢主(妹)をちらりと見れば、少し汗ばんだ首に付く後れ毛と長い睫毛が目に付いた。
な、なんだよ。
心臓が早い。
玉翔旗への高揚感とはまた違った感覚が胸のあたりで騒ぎ出す。
それを振り切るように竹刀に力を込めたけど…午前中の稽古を終えてもおさまらなかった。