第8章 夏の始まりと合宿と…
炊きたての白飯に、ハムとベーコンと目玉焼きは二つ、かぼちゃと玉ねぎがゴロゴロ入った味噌汁はどんぶりで。
レタスときゅうりとトマトのサラダはマヨネーズをたっぷりかけて、パイナップルとスイカの角切り?っていうのか?四角く食べやすくきってあるやつと、牛乳。
朝起きてすぐ、みんなで走り込みをした後に食べる朝飯は、ほんっとに美味い。
普段はギリギリに起きて、母ちゃんに食パン焼いてもらって…って生活だから、朝飯をこうがっつり食うと、充実した気分になる。
つーか、千鶴と夢主(姉)先輩が作ってんだよな。
こんなに大量にすげえな。
食器を下げる時にちょうど千鶴を見つけたから、
「飯、ありがとな。」
と、声をかける。
「ありがとう。沢山食べてくれて嬉しいよ。」
なんて、はにかんで言う千鶴に、少し照れくさくなって、そそくさとその場を離れた。
袴に着替えて稽古場の体育館に行くと、他校の生徒も沢山いる。
夏の暑さと人口密度で 蒸してる体育館は、汗の匂いも混ざってモワッとした空気だ。
一礼をしてから中に入ると、既に素振りをしている夢主(妹)がいた。
うちの剣道部には女子部員がこいつしかいない。
だから、稽古はもっぱら俺らと一緒で、特に違和感もない。
俺らには普通の事だし、力の加減なんてのもしてない。
夢主(妹)の声が響く。
高すぎもせず、弱くもなく、太くもなく…よく通る声だ。
おのずと他校の生徒からも注目を浴びてる。
ひとしきり素振りを終えた夢主(妹)は、一礼をしてから汗を拭く。
タンクから麦茶を注いで、一口飲むと、
「っはー!!!」
まるで風呂上がりの親父がビール飲んでるみてぇで、思わず笑っちまった。
「うわぁっ!平助先輩!居たなら声かけてくださいよ!」
一連の動向を見守っちまった俺に驚いた夢主(妹)は、あーびっくりした、なんて麦茶を飲みながら笑ってる。
「よし!皆揃ったな。ちょっと集まってくれ。」
新八先生のいつもとは違う集合の呼びかけに、少しだけ緊張感が増した。