第8章 夏の始まりと合宿と…
「千鶴ちゃんそろそろ戻ってくるよ?」
「ん?ああ…」
「…見つかったらやばいって言ってなかった?」
「まあそうなんだけどよ…。そのかっこヤバイ。エプロンとか反則だろ。」
「くすぐったいよ先生」
「なに赤くなってんだよ?…なあ…今度うちに来て飯作ってくれよ?」
な…なにあれ!!!!
原田先生とお姉ちゃんは仲良しだとは思ってたけど、いつのまに…
っていうかなんか…え…えろいっ!!!!
隣にいる千鶴はもう耳まで真っ赤っ赤。
キッチンの入口に二人で固まりつつ、中にいるお姉ちゃんと原田先生の様子が気になって、のぞき見をしていると…
ちらり
と、振り向いた原田先生と目があった。
私達は石化したように動けない。
原田先生はかまわずニヤリと笑うと、お姉ちゃんから離れて、
「気つかわせちまったか?悪りぃな。」
と、私達に向かって話かけてきた。
その言葉にバッとこちらを見たお姉ちゃん。
「あ~あ…」
特に動揺もせずに溜息なんてついてる。
なんなのこの二人…
「内緒な?」
口元に人差し指を一本たてて、シーってしながら、原田先生は私達に言うと、キッチンを出て行ってしまった。
「お姉ちゃんっっっ!!」
すかさず詰め寄ると、
「ん~…そういうこと。原田先生のことが好きになりました。」
なんて、言ってる。
何もなかったかのように、私に夕飯作りの指示を出すお姉ちゃんに、いつからだ!だとか、どうしてだ!だとか…あれやこれやと質問攻めをしながら、三人で夕飯の準備をした。
夕飯を終えて、お稽古へ。
「夢主(妹)ちゃん膝はどう?」
沖田先輩はずっと心配してくれてるみたいで、うれしいけれど、不注意で転んだだけだからなんだか申し訳ない。
「もう大丈夫です!」
元気よくそう言えば、とっても優しい笑顔で、
「よかった。」
って言ってくれた。
沖田先輩の優しい笑顔にドキドキしてしまって、顔に熱が上るのがわかる。
朝から晩まで、ご飯も一緒に食べて…沖田先輩の近くにいれることがうれしかった。
お稽古を終えて、お風呂に入って…千鶴とお姉ちゃんは、まだやることがあるとかで居ないから、私は一人で合宿所の縁側に座った。