第8章 夏の始まりと合宿と…
「千鶴ちゃん?ねえ千鶴ちゃん!」
ハッと気がつけば、大量のにんじんの皮を剥き終えた夢主(姉)先輩が、私を呼んでいた。
「す、すみません…なんかぼーっとしちゃって」
ああ…もう…
だめだなぁ私ったら…
そんなことを思って、しゅん…としてしまっていた私に、夢主(姉)先輩は満面の笑みで、何やら包みを渡してきた。
「はい、これ。開けてみて?」
なんだろう?と、包みを開ければ、
ピンク色の可愛いエプロンが出てきた。
「お揃いだよ!色違いで買っちゃった。合宿、頑張ろうね!」
誰もが見とれてしまうような笑顔で、さらにはウィンクまでつけて、夢主(姉)先輩は言う。
「ありがとうございます!」
一瞬でも、黒い感情が芽生えてしまったことを心の中で小さく謝る。
きっとまた…
考えてしまうと思うけれど…
私は私で頑張ろう!
それに、少しだけでも斎藤先輩とお話することが出来て嬉しい。
斎藤先輩の優しい瞳を思い出して、少し顔がにやけたまま、大量の玉葱との格闘を再開した。