第12章 接
いつもの場所で。
いつもの体育座り。
パンツ、見えそーだぞ。
女の子なんだから、気をつけなさいって。
銀さん、何度も何度も。
注意しただろーが。
数ヶ月経っても、変わんねェな。
「新八が、湯呑み新調したってから」
テーブルに茶を出して、待ってるように伝える。
俺はそのまま和室に移動して、後ろ手で襖を閉めた。
「ひでェ顔、してやがる」
俺達の前で、あんな顔を見せたことはない。
表情がない、人形みてェな。
血が通ってない、青白い顔。
何が理由かを聞くのは不躾で。
それを探るのは無粋だ。
突き放せば、戻らないと思っていたのに。
端から知ってたみてェに。
あいつ等、湯呑みを買ってきやがって。
もう一度、その縁が巡ってくるのを。
当たり前のように、察知してたってことか。
「俺ァ、終わりかと思ったんだけどな……」
押し入れから布団を出して。
畳の上に下ろす。
新しいシーツで覆って。
新しい枕カバーにして。
覚悟を決めて、襖を開く。
「朱里ちゃん、着替えてこい」
できるだけ、普通に。
「銀さんの寝間着、貸してやっから」
振り返って、俺を見上げる朱里ちゃんに、寝間着を差し出して。
「ソフレ、復活ってことで」
そう告げると。
泣きそうな顔で、小さく頷いた。
脱衣場に向かう背中を見送りながら。
何をしてやればいいのかを。
必死に探る。
一緒に眠るだけで拭えるモノなら。
いくらでも、その時間を共有してやる。
最善策?
そんなんあるなら、誰か俺に教えてくれ。
一番最適で、優良なヤツを。