第11章 紹
俺達の前で見せることのない素顔を。
奴等の前で晒しているという事実。
これが『嫉妬』というヤツか。
俺は旦那の言葉に従順に。
朱里の手を解放した。
「あんがとね、沖田くん」
目を細めて嗤った顔が。
やけに挑発的で。
そんな旦那が目の前に居るっていうのに。
剣を交えることができねェなんて。
「損な役回りでさァ」
餌を撒いたのは、俺。
捕らえて食らったのは、旦那。
「俺も我慢の限界でしてね……朱里のこと、頼みますぜ、旦那」
「言われなくても、そうするわ」
万事屋を後にして歩き出す。
公園に置き去りにした山崎が、電柱の陰から顔を出した。
「沖田隊長、優しいんですね」
何で泣いてんだ、テメーは。
「わざわざ、損な役回りを買って出て」
何で見に来たんだ、テメーは。
「嫌われても、万事屋に連れてくなんて」
最初から嫌われてんだけど。
「俺、感動しました!」
テメーに感動されても迷惑。
「ずっと、苦しそうでしたもんね…朱里さん」
普段通りに、振る舞ってた朱里に。
違和感、感じてたって言うなら。
やっぱ、監察に向いてんだな。
「俺はお膳立てしただけでィ」
この後、山崎が。
「素直じゃないですね、沖田隊長」
と言ったので。
半殺しにして、ゴミ捨て場に置いてきた。
「旦那、役者は揃えてやったんだ」
後はテメーらで何とかしてくだせェ。