第9章 秘
ご褒美くれといて。
御免な。
その涙。
拭ってやれなくて、御免な。
俺は『ソフレ』であって。
朱里ちゃんの『いいひと』じゃないから。
慰めの言葉も掛けないし。
背中に手を添えることもできない。
朱里ちゃんが。
『NO』と言わないと知ってて。
こんなこと言って。
最後に、泣かせることになった。
お互い、欲しいものを手にいれて。
結局、こうなった。
こんなことになるなら。
最初から。
手を差し伸べるべきじゃなかった。
『放っておけなかった』
それは、俺の勝手な言い訳で。
今、そんな風に泣かせてるのは。
紛れもない、俺自身じゃねェか。
もっと早くに、切り捨てるべきだった。
『大切な何か』になる前に。
俺が気づいてやれば、良かったのに。
御免な。
俺は、それを声にしてやることもできねェけど。
最後にひとつだけ。
俺が叶えてやれることって、あんの?
「ギュッて……抱き締めて、ほしい」