第7章 眠
結局。
俺はあれから一睡もしないまま。
身動ぎひとつ、しないまま。
朝を迎えた。
「おはようございます、坂田さん」
寝ている俺を気遣った、小さな声に。
「おはよーさん」
掠れた声で返事をする。
まだ、夜明け前だけど。
黒い警察は、寝るのも起きるのも早いんですねェ。
俺は寝足りないけど。
「何?帰るの?」
素っ気なく言って、身体の向きを変える。
布団の中で正面から向き合うの、初めてだな。
俺は枕から、自分の腕に頭の位置を変えて。
目を細めて、視線を合わせる。
「帰っちゃうの?」
もう一度聞いて。
「朝飯くらい、ご馳走しますけど?」
俺の台詞に、笑顔を見せて。
「素敵なお誘いですね」
そう言ってくれたから。
何か、もう。
無駄な緊張も、眠れなかったことも。
チャラでいいわ。
この関係が継続するものなら。
これ以上をとやかく聞くのは無粋だし。
徐々に、知ればいいよな。
綺麗なコトも。
汚れた部分も。
もう、それでいいや。
「で?よく寝れたの、お前は」
同じ寝間着を着たまま。
仲良く台所に立って朝食を作って。
「久しぶりに、いい夢を見ました」
所望されて作った。
半熟の目玉焼きを食べて。
食後のお茶を飲んで。
同じ香りを纏いながら。
後片付けをして。
お互い、身支度を終えたら。
新しい一日が始まる。
「後で一緒にパフェ食べに行かねェか?」
今後についての話は、そこで聞くわ。
今日も添い寝が必要なら。
ついでにそのとき言ってくれ。