第31章 眼
「何したら戻んの?」
目の前で首を傾げた猫は。
綺麗な目で、俺を見ていて。
「猫になっても、別嬪さんだねェ」
人の姿をしていたら、面と向かって言えないような台詞を。
無意識に言わせる力を持ってる。
「とりあえず、ゴリラに連絡して、無事だって言っとくな。探してるかもしれねーから」
掛け直すと言った電話を。
約束通りにして。
ゴリラに現状を伝えて、受話器を置く。
「体内の『何らか』が排出されれば、戻るらしい。それまで、面倒見てやってくれ」
随分と、簡単に言うけど。
その『何らか』って何?
それ、食わせた奴等に聞いてくんない?
「……気長に待つしかねェか。傍にいるだけ、良いと思わねェとな」
足元にすり寄る朱里ちゃんの首を撫でて。
『慣れた』はずの、待つの延長に溜息。
刀振るっての無茶なら叱れるが。
飯食っての予想外に、声を荒げても仕方がない。
「心臓がいくつあっても足りねーわ」
いつでも触れられる距離に。
置いておきたいって。
そりゃ、思っちまうよ。
戦場でも、先陣切って走ってくような女だから。
一緒に戦うことも、できる女だから。
「全部引っ括めて、惚れたんだけど」
もう少し、俺の気持ち。
汲んでくれても、いいと思うよ?