第30章 探
「客じゃねェなら、着替えなきゃ良かったわ」
四人が去った後の玄関に視線を向けて。
溜息混じりの愚痴が溢れる。
すっかり目も覚めちまって。
もう一度、着替えるのは億劫だ。
まだヒリヒリ痛む、頬を撫でて。
溜息を一つ。
「アイツ等、何だったの?」
意味解んねーし。
あんだけ見たり触ったりしたがったくせに。
怒って帰っちまうなら。
最初から来んなって。
それとも、猫に負けたと思い知ったか?
「猫、無事か?」
開いた襖から顔を覗かせて。
怯えて隠れたと思われる猫に、声を掛ける。
落とした視線の、その先に。
俺の着物にくるまるモノ。
アレ?
ナニコレ、ヤダコレ。
最低と頬を打たれたのも。
許さないと、吐き捨てられたのも。
悦ばせてあげられると、言われたのも。
視線を合わせてもらえないのも。
コレが原因?
被った着物の裾から、白い足。
襟元から、白い肩。
覗く背中も。
全部、素肌晒して。
見方を変えたら。
事後みたいな絵面。
つーか、間違いなく。
朱里ちゃんだよね!?
さっきまで、そこに。
黒猫が、居たはずなんだけど?