第28章 常
「おかえりなさい」
玄関で出迎えてくれた朱里ちゃんは。
俺の手から然り気無くスーパーの袋を受け取って。
ブーツを脱ぐ俺を待ってる。
この子、家の子になっちゃえばいいのに。
この状況で、そう思っちまうんだから。
本当に質が悪い。
俺は俯いたまま自嘲する。
「銀さん、早く……流石に辛い、です」
引き戸の外で、新八が吐く弱音。
細い腕で、それを受け取ろうとする朱里ちゃん。
イヤ、そこは俺の出番でしょ?
「お前は本当、最後の一手が弱いわ」
「そっちに比べたら、存分に重いですから」
「俺が持つから、家入れ」
「助けてくれるの、遅すぎですよ」
「男の子はそうやって強くなんの。大事だよ、コレ」
新八が脇に抱えた米袋を受け取って。
俺はそのまま、台所へ向かう。
「ありがとう、新八くん。お疲れさまでした」
背中に聞こえる声にすら。
ちょっとした嫉妬。
俺にも寄越せとは、言えないけどね。
「坂田さん、ありがとう。美味しいご飯、作りますから」
いえいえ、こちらこそ。
ご褒美としては、十分な言葉。
本当は、そのまま抱き寄せて。
口付けの一つでも、お見舞いしてやりてェ気分。