第26章 告
「これで安心アル」
台所で、僕の隣に立った神楽ちゃんは上機嫌だ。
あの日から、神楽ちゃんは口には出さないけれど。
銀さんの様子を酷く気にしていた。
遠い星に行ったという、朱里さんのことも。
「これで、安心ネ」
同じ言葉を繰り返して。
「私たちが居なくなっても、銀ちゃん、大丈夫アルな」
少し寂しげな顔をした。
神楽ちゃんは神楽ちゃんなりに、そう遠くない未来を見つめていて。
それを真摯に受け止めようとしている。
僕は知ってるよ。
神楽ちゃんが、どれだけ銀さんを好きか。
それは恋愛感情に近い、別のモノ。
僕も似たモノを持ってるんだ。
「銀さんは、僕らの手を放さないよ」
きっと、直ぐではなくて。
もう少し、見守ってくれるはず。
「さみしがり屋で、天の邪鬼アル」
「そうだね。生粋のドSだし」
「見た目に似合わず、器用ネ」
「何でもそつなくこなすよね」
「面倒臭がりだから、やらないだけアル」
本当は、自分の世話は自分でできる人なんだ。
僕と神楽ちゃんがいなくても。
炊事、洗濯、何でもできる。
朝は弱くて、酒と賭け事にも弱い。
あと、女性の涙にも。
出逢いは何であれ。
最初はからかい半分で差し伸べた手を。
放せなくなったのは、銀さんだ。
そういう人だ。
僕と神楽ちゃんが居ない日に。
銀さんと朱里さんに何があったかなんて。
知る由もないけれど。
銀さんが、あんな顔するって知れただけでも。
僕にとっては、大収穫だ。