第25章 傍
入り口に並んで立つ。
夜の散歩が、朝帰りを通り越しての昼帰り。
ちょっとした罪悪感と、秘密の共有。
前にも、こんな気持ちにさせられた。
顔を見合わせて、笑う。
「ただいま」
そう言って、引き戸を開けて。
我が家さながらの振る舞いに、口元が緩む。
俺はそのまま、ソファーに座って。
読みかけのジャンプを手に取った。
「脱いで?」
「……え?」
「着てるもの、脱いでください」
見下ろす表情は、満面の笑み。
帰って早々、誘われちゃってる?
しかも、ソファーで?
背後に立った朱里ちゃんの手が。
肩から服の留め具に移動する。
「ちょ、止めて、恥ずかしいでしょーが」
両手首を捕らえて、宥めて。
自分で脱げるからと、立ち上がる。
「坂田さん、急いで」
「時間足りない?」
「足りません」
「布団、敷く?」
「必要ないです」
「つーか、何で戻ってんの?」
「え?」
「何で『坂田さん』呼び?」
あんなに可愛く『銀さん』って呼んでくれたのに。
元に戻ってんじゃねーかァァァ。
何故?
どーして?
Why?
「駄目ですか?」
「駄目ですね」
「だって、」
「だって、何?」
「……恥ずかしい、です」
アレって、アレのとき限定?
やっと呼んでくれたのに?
「エッチのときだけ?」
「……駄目、ですか?」
「………」
「…………」
「あーもー、我慢するから」
『エッチのときは、ちゃんと呼んでね』
耳元で囁いた声に。
顔を真っ赤にして、小さく頷くその様に。
今すぐ押し倒して。
確かめたいと思っちまうんだから。
やっぱり、どんだけ絆されてんだって。
自覚症状はあるんだけど。