第21章 煩
「これじゃ、足りねェか」
皿を見つめていた視線が上がって、俺を見る。
「足りません」
きっぱり言ってから。
「もっと欲しい」
可愛くねだる。
断れないって、知ってんのに。
朱里ちゃんのが、意地悪じゃねーか。
「何が欲しいの?」
「坂田さん」
「ちょ、だから、それは駄目だって。マジで恥ずかしいわ」
思うがままに翻弄されてる俺って。
本当、どんだけ絆されてんだ。
「………夕飯食べて、風呂入ってからなら許可します。とりあえず、飯食え」
照れたり。
恥ずかしかったり。
互いの言動に、慌てたり。
新八と神楽の世話してるのと同じようで。
明らかに違う一線がある。
そりゃ、そうだ。
肌を重ねて、繋がったんだから。
向かい合って座った、こちら側から見える。
その首筋の痕、俺が残したモノだし。
「坂田さん?」
声に視線を向ければ。
スプーン持ったまま、呆けた俺に首を傾げて。
「お腹いっぱい、ですか?」
少し残ったオムライスを指差す。
「ちょっと、考えごと」
ちょっと、良からぬことを考えてたとは。
口が裂けても、言えねェ。
平静を装って、残ったスープを流し込んで。
「後片付け、するか」
皿に残った、ハートマークを。
名残惜しそうに見つめる目に。
「頑張ったら、ご褒美やるから」
そう言って甘やかすのも。
当然、アリ、だろ?