第19章 閨
充分に、そこが蕩けてること。
さっき聞こえた、粘着質な音で判る。
まだ触れてもいない、その場所。
「あの、朱里ちゃん……?」
俺の呼び掛けに、濡れた視線を寄越す。
その目は、欲しいと急かしてるのに。
頑なに離れない、腿と膝。
「そろそろ、脚、開いてくんない……?」
他の部位は、委ねてくれるのに。
ここだけ稼働スイッチ、別にあんの?
「や……」
力の入らない手で、俺の胸を押し返して。
ゆるゆると首を振る。
一巡し終わった項から。
胸元を攻めて、腹を避けて腰のラインを撫でる。
「ぁ……ッ」
そんなに敏感なのに。
何で、ここは揺るがないの?
脚の付け根を、指先でなぞって。
外側に、歯を立てる。
「……駄、目……」
強請るように、腰は揺れてるのに。
口では、拒否するんだ。
「それはそれで、そそるけどね……」
膝を浮かせた、その体勢。
触れようと思えば、いとも簡単に届く。
両足を腕で抱いて、歯を立てた場所から舌を這わせて。
腿の後ろ側を、指先でなぞる。
「や……ぁ……んッ」
そんなに感じてるのに。
すげェ、頑な。
俺の肌から落ちた指先で、畳の上の着物を握って。
この熱を、まだ堪えるつもりでいる。
その姿が、更にこの昂りを煽るってこと。
どうやって教えれば、伝わる?