第19章 閨
「…ぁ……さかた、さ…ん……」
熱に浮かされた唇を開いて。
譫言のように名を呼ばれる。
形勢逆転。
息も絶え絶えになった朱里ちゃんは。
首に回した腕を、服を掴んだ指先で支えてる。
「………も……これ、以上…駄目……」
まだ、理性と本能、秤にかけてんの?
さっき、別々に風呂も入って。
昨日の朝の拒絶の理由。
解決した、はずだけど?
「何が駄目?」
「ん……無理…だか…ら…」
「無理って?」
「も……限界、」
深い口付けの間に。
途切れ途切れに抗いの声を出して。
それでも手足で抵抗しないのは、何で?
「……し……い…」
今、何て?
「……聞こえるように言わないと、止めちゃうよ?」
意地悪く、催促する。
触れ合ってた唇を離して。
「どうする?」
耳元から追い詰める。
耳朶を軽く噛みながら、首に回された腕を解いて。
両手首を捕らえたまま、首筋に舌を這わせる。
避けるように首を捩るけど。
それじゃあ、舐めやすいように晒してるだけ。
「………し、」
乱れた呼吸のせいで、思うように喋れないのも。
聴覚を研ぎ澄ませるのには効果的で。
感覚も研ぎ澄ませて。
耳に全神経を、集中させて。
一言一句、聞き漏らさないように。
「さかた、さん……と……した、い…ッ」
俺。
今、悪い顔してる。
拒むくせに、そんな誘い方。
どう考えたって、想定外だ。
どうなっても、知らねェぞ。