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好きなだけじゃダメなのか

第3章 秘密


あの後レオン王子と別れて、
王宮に帰った私は、教育係やら母やら
メイド長やらにこっぴどく叱られた。

「あなたは王女なのですよ?!」

だとか

「身分をわかっているの?!」

だとか。
理不尽なことを言われたわけじゃない。
けど、なんか腑に落ちない。

なんだろう。
悶々とした気持ちで回廊を歩いていると
褐色の肌の少年に出会った。

「…姫!」
「…もしかして、レイ?」
「はい!お久しぶりですね!」

快活に笑うこの少年は、レイという。
移民二世らしく、この国では商人をして
生計を立てているそうだ。
私とは、2年前の夏に出会った。
学舎の初等部を卒業した王族は、
成人の儀を行うのだが、そのための
ドレスやら靴やらを売りに来たのが、
このレイだったのだ。

「ハンス様の成人の儀が今年でしょう?
今日は王妃様に服を見せに来たんです」

そういえば、ハンスも成人か。
弟の成長が嬉しいよ、お姉ちゃんは。

「そう。ありがとうね」
「あ…服を、見せに、参りました!」
「そんな言葉使わなくていいのに」
「いえ!王族ですから!」
「そう。…ああ、そうだレイ」
「はい」
「買い付けって、どこに行くの?」
「だいたいは隣の国ですが…何か?」
「…いえ、なんでもないわ」
「そうですか。僕はこれで失礼します」
「ええ。ありがとう」

頭の上に載せた荷物を落とさないよう
器用に会釈して去っていく商人を
見送りながら、そっと呟く。

「…やっぱり、聞けないね」

バレちゃ困るもの。
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