第3章 過去
夢みたい、とは、思わなかった。
テニスをする景吾を初めて見たとき、私は確かに「やっと見つけた」と思った。
景吾より先だっただけで、景吾もちゃんと私を見つけた。
偶然と言われても構わない。
景吾、あの出来事がなかったら、貴方は私のことを知らないまま過ごしたと思う?
私はそうは思わない。
あの出来事がなくても、貴方は私を好きになったと思う。
私を見つけたと思う。
景吾、私は貴方の近くにいる?
貴方は私の近くにいる?
眼鏡がなくても少し笑えるようになったのは、貴方が私を認めてくれたから。
景吾。