第2章 出会いと別れは必然
「良かった……。本当に良かった……」
「体は大丈夫か、ライナ」
「え、あ、はい」
何が一体どうなっているんだ……。
私が目を覚ましたって皆して慌てて、お母様とお父様まで急いで駆け付けて来て……。
さっぱりわからん。
「姫殿下は1年も昏睡状態であらせられたのですよ」
「い、1年!?」
私、1年も眠っていたの!?
そんなに寝てた覚えはないけど………。
「姫殿下は体があまり丈夫ではいらっしゃらないのに加え、日頃の疲れや精神状態の不安定などの総合の結果が、昏睡状態とのことです」
「そう、だったのですか……」
皆に、迷惑をかけてしまった……。
王女失格だ……。精神の不安定などが、この結果を招いてしまったのだから……。
ギュッ
「お母、様……?」
「心配したのですよ……ライナ。妾も、そして陛下も」
「!」
お父様、が……?
優しい時もあったけど、基本厳しいお父様が……?
私は単純に、嬉しいと思った。
ヒルメスお兄様がいなくなって、心の在り処を探していた私には、とても嬉しかった。
後から聞いた話では、私の顔は、不安そうだったとのこと。
それで、お母様が抱き締めてくれたというわけだ。
「………心配をおかけしてしまって、申し訳ございません」
「全くだ」
「っ……」
お父様……、やっぱり怒ってる……。
心配してくれて嬉しかったとはいえ、多少雰囲気がおっかなかった。
「……だがな、娘の心配ぐらいはする」
「お父様……!」
「目が覚めて、予は安心したぞ」
「……ありがとうございます、お父様」
私はこの時、“親”と名乗っている二人のことを、やっと“親”と認めることだ。
只この世界に産み落としてくれた“恩人”とまでしか、思っていなかったのだから。
だから、心を開いたことはなかった。
上辺だけの接しとか、今までそんな感じだった。
だから少し、心が落ち着いた。
お父様がヒルメスお兄様の部屋に火を放ったかどうかは、わからない。
でも、信じたいと思った。あれは、何かの間違いだと。
それぐらい、許せることだろう、神様。
何を信じるかは、人の自由なのだから。
――でも、多少胸のざわつきがあったのもまた事実。
――だが王女は、それを意識的に感じようとはしなかった。