第5章 予想通りの展開
「・・・これで終わりかな。荻野さん、何かある?」
自己紹介、委員決め、各プリントを配布し、行事等の今後のスケジュール確認が終わったところで、万里は板書係に徹していた真依に話をふった。
「大丈夫じゃないかしら?私からは、特に何も・・・先生、何かありますか?」
特に思い当たることもなかったため、律子に声をかけた。
「あ~いいんじゃね?いやークラス委員が優秀だと助かるな」
読んでいた本を閉じ、ニコニコしながら立ち上がった。
「明日実力テストだからなー帰って勉強しとけよー」
そう言うと、ろくに挨拶することもなく、生徒たちの挨拶を待つこともなく、教室を出て行った。
『・・・・』
あまりの早さに誰も反応できなかった。
「・・・えーと、そういうことだから。今日は終わりね」
万里が苦笑いしながらクラスに声をかけると、解放されたように皆動き始めた。
真依も席に戻り、あずさと喋りながら帰る支度を始めた。
「日下は予想通りの展開になってるねー。真依、今日お昼は?どっか寄る?」
ニヤニヤと笑いながら、あずさは後ろにある女子の輪を眺めた。
万里の席の周りに女子が集まっていた。
「ご苦労なことねぇ。食べて帰ろっか、何か疲れちゃったー」
「オッケー、そうしよ」
プリントを仕舞い、鞄を持ってあずさと教室を出ようとした。
「荻野さんっ」
声をかけられ、後ろをふりかえると、自己紹介で遠藤、宮川と名乗った男子がいた。
「なぁに?」
少し首を傾げて聞くと、二人の頬が赤く染まった。
「いいいいや、帰るならさ、一緒に帰らないかなと思って」
振り返らなかったあずさが、横で笑っているのがわかる。
クラスの男子の視線が集まっているのがわかる。
「ごめんね、ちょっと用事があるの。折角誘ってもらったんだけど・・・」
少し上目遣い気味に申し訳なさそうに謝ると、二人は慌てたように首をふった。
「あ、いや!いいんだ!また今度!な!」
「お、おう!またね、荻野さん」
「ごめんね、また明日」
笑顔で別れを告げると、二人の顔がさらに赤くなった。
そんな二人を置いて、あずさとともに教室を出た。
廊下の角を曲がるまで、背中に感じる視線はなくならなかった。