第12章 優しさの意図
「荻野さん、コピーとっておくからご飯食べてきなよ」
そう言って真依の手から楽譜をとりあげた万里に、真依は慌てた。
「私も手伝うよ。コピーは機械がやってくれるからいいけど、折るのは大変だし」
「大丈夫大丈夫。悪いけど教室戻ったら平呼んできて。あいつ多分飯食い終わってるから」
そう言って万里はコピーを始めた。
(なんか悪いけど・・・ま、本人がいいって言ってるんだしいいか)
「ありがとう、そしたらお言葉に甘えさせてもらうわね」
万里を覗きこんでお礼を言うと、万里の動きが一瞬かたまった。
「・・・いえいえ〜」
ふわりと微笑んで、職員室を出る。
「失礼しました」
(私が食べるの遅いと思って先に帰してくれたんだろうなぁ。ありがたい)
女慣れしている性格からか、優しさの意図には中々気が付きにくそうだ。